◆はじめに

 

夫側レスに直面している女性の書き込みを拝見して思うのですが、少なからぬ女性は、「男性は結婚したら妻にセックスを求めるはず」という、漠然とした先入観や思い込みに囚われすぎていませんか?

 

その前提になっているのが、たとえば、「男性のセックス欲は本能的、生得的なもので、しかも女性よりも旺盛である」とか、「男性に女性への愛情、好意、思いやりがあれば、セックスに応じるはず」とかといった類の、世間で幅を利かせている、しかも何の確たる根拠の裏付けもない、単なる迷信や俗説ではないでしょうか。

 

だからこそ、夫(男性)側セックスレスに直面した女性の多くは、まるで口裏合わせたかのように、「夫はなぜセックスレスになるのか?」と問わざるを得ないのではないでしょうか。

できれば、夫側セックスレスに直面した女性には、「なぜ夫は妻にレスするのか?」ではなく、むしろ「なぜ男性は結婚すると妻にセックスを求めるのか?」と問うていただきたいところです。

 

そう、女性主導で女性が理想とするセックスを実現するためにも、夫側セックスレスにきちんと対応するためにも、女性にはもう少しこういう疑問と真正面から向き合う必要があるのではないかと思われてなりません。

 

 

◆建前事、きれい事でセックスを語るのはやめよう!

 

あらためて申し上げるまでもなく、憲法第24条には、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と記されております。

「相互の協力」の中身にセックスも含まれていることについては言うまでもないですよね。

 

でも、第二次世界大戦敗戦後、現憲法や民法の婚姻に関する条項を起草した法学者たちが、はたして夫が《セックスレス》になったり、妻が夫側セックスレスで苦しんだりした場合の法的対処のあり方について一度でも真面目に考えたことがあるのか?と問われるなら、おそらく一度もなかっただろうと推察せざるを得ません。

 

なぜなら、ちょっと考えただけで明らかなように、当時の性・セックスに関する社会通念・一般常識に照らす限り、建前事、きれい事はさておき、結婚(婚姻)とは、実質的には女性が男性にセックス権を譲渡する代償として、男性から被扶養権を獲得するという、男女間の《GIVE&TAKE》の契約に関する規定以上でも以下でもなかったはずですから。

 

その意味では、ことセックスに関しては、男女が法律婚の契約を結び、男性は条件付き(妻子の扶養・養育の義務を負うこと)で一人の女性とのセックス権を社会的・法的に《公認》され、セックスで妊娠する側の女性は安心して妊娠・出産・育児に専念できる環境・条件を社会的・法的に《保障》されたと言えますよね。

 

もし、高精度の避妊手段が普及するまでの期間、婚姻制度とセックスの関係について、ほぼ以上のように説明され得るとすれば、婚姻制度に対して女性のセックス権の法的な保障を求めるという発想そのものが、実は根本的に間違っていることになるのではないでしょうか。

 

 

◆なぜフェミニストはセックスレス問題には無関心なのか?

 

常に男性による女性差別の撤廃、女性の権利拡張に向けた運動の先頭に立ってきた社会学者の上野千鶴子さんは、大川玲子さん(国立病院機構千葉医療センター・産婦人科医長) との対談「女性のゆたかなセックスのために」で、

 

上野 この人にはとりあえず生活保障をしてもらっているわけだから,これ以上どん欲な要求は出さないで(笑),快楽はよそで調達してこようとか,知的刺激はよそで調達してこようとか,なぜ女たちは思えないのでしょう,と私はいつも結婚している女たちをみて思ってたんだけど。

 

と、にべもなく言い放っていますが、だれよりも女性の権利尊重を声高に唱え、男女平等を推進してきた人の言葉であるだけに看過できないところがあります。

 

思うに、フェミニストからすれば、婚姻制度なんて、所詮スケベ男たちの欲望を充たすための、あるいは女性の差別的支配を狙った制度にすぎないわけで、こういう婚姻制度に潜む裏事情、男たちの欲望の正体・真相に気づかず、「レス夫はけしからん! 妻のセックス権の侵害だ!」と本気で怒っている女性を見て呆れざるを得ないのではないでしょうか。

 

その意味でも、女性の皆さんには、上野さんを含む、いかなる女性差別をも許さないという、筋金入りのフェミニストほど、夫(男性)側セックスレス問題には無関心で、深刻にレス問題で悩んでいる女性に冷淡なのはなぜか?と、一度は徹底的にお考えいただきたいところです。

 

 

◆おわりに

 

婚姻制度にしろ、性に関する倫理規範や道徳律にしろ、いずれも女性にとっては自分の幸福を実現するための一つのマニュアルにすぎないのに、これがあたかも女性の幸福実現のための必須要件、金科玉条であるかのごとくに信奉し、男性の都合優先の結婚観やセックス観を不問に付したまま、夫側セックスレスや夫の浮気(不倫)をめぐる諸問題の解決・改善をはかろうとしても、おのずと限界があるのではないでしょうか。

 

高精度の避妊方法がすっかり普及してしまった現在、その結果、婚姻関係の有無にこだわらず、「愛があれば自己責任でセックスしても構わない(しない方がおかしい)」とするセックス観が、善くも悪くも若い女性の間に定着?しつつある現在、「結婚すれば夫がセックスを求めてくるはず」とか、「セックスレスは妻のセックス権の否定だ」とかという、男性のセックス欲・セックス動機の基本性格をあまりにも無視した、あまりにも非現実的なセックス観に囚われ続けることから、そろそろ女性も解放されてしかるべきなのではないでしょうか。